行為能力の制限と債務不履行【不動産オーナーが知っておくべき節税策ベスト100選】

民法では、単独で完全に有効な法律行為を行うことができる能力のことを「行為能力」といいます。しかし、弱者救済のため、一定の者の行為能力を制限して、保護する規定を定めています。

行為能力の制限

行為能力の制限一つは、未成年者です。未成年者とは年齢20歳未満(2022年から18歳に改正)の者をいいます。未成年者は、法定代理人(親権者または後見人)の同意を得るか、法定代理人に代理してもらうことによって、完全に有効な法律行為ができます。よって、未成年者が親の同意なく勝手に法律行為を行った場合には、それを取り消すことができます。たとえば、17歳の子供が勝手に土地の売買契約を締結しても、それを取消しすることができます。

また、成年被後見人の行為能力も制限されています。成年後見人とは、精神上の障害によって物事を判断する能力がない人で、家族などからの請求によって裁判所から後見開始の審判を受けた人を言います。完全な認知症になったイメージです。成年被後見人が法律行為を行うには、成年後見人(保護者)が代理しなければいけません。成年被後見人が行った行為は、たとえ成年後見人の同意を得ていたとしても、取り消すことができます。
たとえば、成年被後見人の自宅を売却するときは、成年後見人が代理して売買契約を行います(家庭裁判所の許可が必要です。)。 
同様に、軽い認知症である被保佐人や被補助人の行為能力も、能力の程度に応じて制限があります。被保佐人は重要な財産上の行為のみ保佐人の同意を必要しますので、保佐人の同意を得ないで自宅の売買契約を締結したときには、その契約を取り消すことができます。

債務不履行

アパート1棟の売買契約を考えましょう。たとえば、2018年6月30日に、買主であるA氏が、売主であるB氏からアパート1棟を1億円で購入する契約です。
6月30日になってもB氏は海外旅行で遊んでおり、アパート1棟を引き渡そうとしません。B氏はどうすればよいでしょうか?
これは、履行期(6月30日)を過ぎても契約の相手方が債務を履行しない「履行遅滞」という状況です。この場合、A氏が怒って「ふざけんな!お前からはもう買わないぞ!」ということはできません。B氏は、相当の期間を定めて引き渡しを催告しなければいけないのです。
催告しても引き渡してくれない場合、契約を解除することができます。そして、A氏はB氏に対して損害賠償を請求することができます。

それでは、A氏の不始末で火事が発生したためにアパート1棟が燃えてしまい、アパート1棟全部が使えなくなった場合はどうでしょうか?この場合、B氏が引き渡しを催告しても、もはや意味がありません。それゆえ、B氏は催告の必要はなく、直ちに契約の解除を行うことができます。そして、B氏はA氏に対して損害賠償を請求することができます。

契約の解除

契約を解除するには、解除の意思表示を行うことによって足ります。相手の承諾は要りません。一方的に相手に伝えるだけでいいのです。
解除がなされると、契約は初めから無かったものとされ、両当事者は元の状態に戻す義務(原状回復義務)を負うことになります。

しかし、例外があります。転売されて登記済みのケースです。たとえば、Aが土地をBへ売却し、Bが代金を支払わないうちに、BがCへ転売し、Cが所有権移転登記を済ましたとします。Bの債務不履行ですから、Aは解除できるように見えます。しかし、この場合、AはCへ土地を返すように求めることができません。つまり、Aは落ち度が全くないのに負けてしまうのです。第三者の登記がポイントです。