レバレッジを掛けた資産運用(3億円超所有する資産家のための資産運用と資産承継)

外資系プラーベート・バンクでは、金融資産家に対して有価証券担保ローンを提供しています。つまり、金融資産の運用残高を膨らませ、利回りの上昇を狙うという運用手法です。ハイリスク・ハイリターンの投資となります。
5億円の金融資産家に対して、掛目70%で3.5億円の有価証券担保ローン(金利1%)を提供し、同額を金融商品で運用します。1%で調達して4%で運用するわけですから、これによって3%の利ざやを抜くことが可能となります。そうすれば、この金融資産家の利回りは、レバレッジ効果が効いて、6.1%となります。
プライベート・バンクによる有価証券担保ローンは、「元本据え置き」であり、毎年利息だけ支払い、満期に元本全額を返済するというものです。これは、不動産投資を行う場合のローン(元利均等払い)と大きく異なります。

実質利回り6.1% = (5億円×4%+3.5億円×3%)/5億円

(注)利ざや(3%)を再投資して複利運用します。

【図 金融商品5億円+金融商品5億円+借入金▲3.5億円の運用】

5億円の資産は、父親の世代で14億円まで増やしましたが、子供の世代では結局17億円までしか増やすことができませんでした。これは、子供に対して相続税の支払い▲5億円が生じたからです。40年目に現金化したとすれば、最終的な税引前の利回り(IRR)は、3.2%となりました。

さらに、外資系プラーベート・バンクでは、金融資産家に対して有価証券担保ローンを提供するだけでなく、不動産オーナーに対して不動産担保ローンを提供します。そこで、不動産オーナーに金融資産運用を行わせ、金融資産家に不動産投資を行わせるという方法を検討してみましょう。
これによって、金融商品の「増やす」長所と、不動産の「減らさない」長所の両方を活用できる可能性があります。2種類の資産で運用を行うために、借入金によってレバレッジを掛けてみましょう。

5億円の不動産オーナーに対して、掛目70%で3.5億円の不動産担保ローン(金利1%)を提供し、同額を金融資産(分配金は再投資)で運用します。1%で調達して4%で運用するわけですから、これによって3%の利ざやを抜くことが可能となります。そうすれば、この不動産オーナーの利回りは、レバレッジ効果が効いて、4.1%となります。
そうしますと、資産家は5億円の不動産を2%で運用すると同時に、金融商品を実質的に3%で運用することになります。このときの、投資額は5億円と変わりません(=不動産5億円+金融資産3.5億円+借入金▲3.5億円)。したがって、加重平均した実質利回りは、以下のように4.1%となるでしょう。

実質利回り4.1% = (5億円×2%+3.5億円×3%)/5億円

(注)利ざや(3%)は再投資して複利運用とします。

【図 不動産5億円+金融商品3.5億円+借入金▲3.5億円の運用】

5億円の資産は、父親の世代で10億円まで増やしましたが、子供の世代では結局13億円までしか増やすことができませんでした。これは、子供に対して相続税の支払い▲3億円が生じたからです。40年目に現金化したとすれば、最終的な税引前の利回り(IRR)は、2.4%となりました。

前述のモデルとは反対に、5億円の金融資産家に対して、掛目70%で3.5億円の有価証券担保ローン(金利1%)を提供し、同額を不動産で運用します。1%で調達して2%で運用するわけですから、これによって1%の利ざやを抜くことが可能となります。そうすれば、この金融資産家の利回りは、レバレッジ効果が効いて、4.7%となります。

実質利回り4.7% = (5億円×4%+3.5億円×1%)/5億円

(注)利ざや(1%)は再投資して複利運用します。

【図 金融商品5億円+不動産3.5億円+借入金▲3.5億円の運用】

5億円の資産は、父親の世代で12億円まで増やしましたが、子供の世代では結局15億円までしか増やすことができませんでした。これは、子供に対して相続税の支払い▲4億円が生じたからです。40年目に現金化したとすれば、最終的な税引前の利回り(IRR)は、2.8%となりました。

以上の結果をまとめてみましょう。

  投資額 20年後の

相続税

40年後 トータル

利回り

金融商品(4%)運用 5億円 ▲5億円 12億円 2.2%
不動産(2%)運用 5億円 ▲2億円 8億円 1.3%
金融商品に加えて、

借入金+金融商品

5億円 ▲5億円 17億円 3.2%
不動産に加えて、

借入金+不動産

5億円 ▲3億円 13億円 2.4%
金融商品に加えて、

借入金+不動産

5億円 ▲4億円 15億円 2.8%

以上のように、レバレッジを掛けて最も利回りを高くした運用方法、すなわち、金融商品運用を基本とし、それを担保に借入れを行い、金融商品を追加する方法が、親子二世代の運用を考える場合においても、最も高い利回りを出すこととなりました。

著者紹介

岸田 康雄 (きしだ やすお)

事業承継コンサルティング株式会社 代表取締役
島津会計税理士法人東京事務所長
公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)

一橋大学大学院商学研究科修了(経営学および会計学専攻)。 中央青山監査法人(PwC)にて事業会社、都市銀行、投資信託等の会計監査および財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券、SMBC日興証券、みずほ証券に在籍し、中小企業経営者の相続対策から大企業のM&Aまで幅広い組織再編と事業承継をアドバイスした。 現在、相続税申告を中心とする税理士業務、富裕層に対する相続コンサルティング業務、中小企業経営者に対する事業承継コンサルティング業務を行っている。 日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。中小企業庁「事業承継ガイドライン」改訂小委員会委員。

著書には、「プライベート・バンキングの基本技術」(清文社)「信託&一般社団法人を活用した相続対策ガイド」(中央経済社)「資産タイプ別相続生前対策完全ガイド」(中央経済社)「事業承継・相続における生命保険活用ガイド」(清文社)「税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド」(中央経済社)、「証券投資信託の開示実務」(中央経済社)などがある。