【資産運用の戦略】金融資産のを分析する3つの視点

現在保有している金融資産の内容をよく把握・分析し、必要に応じて見直しをしておきましょう。

保有金融資産はすぐに分析すべき

財を成した方、遺産を相続された方など、まとまった資産をお持ちの方が、何も手をつけずに放置している例は少なくありません。株式や土地を相続したものの、それらの資産の評価額を把握されていないケースもあります。もったいないのは、相続した株式をそのまま長い間放置していたため、産業構造の変化などによって時代遅れとなり、後で調べてみると株式市場の平均リターンを大きく下回っているようなケースです。どうせ長い間放っておくなら、個別銘柄の倒産リスクを最小限にして、市場平均並みのリターンは確保しておきたいところです。
ライフステージや経済情勢は常に変化しています。何を目的として有価証券を保有しているのか、その目的と保有資産の性質が合致しているのか、定期的にチェックするか、チェックの仕組みを作っておく必要があります。
自分でチェックするのは難しいという人の場合、専門家に依頼するのも方法のひとつです。依頼するなら証券会社のほか、独立系の投資顧問会社や金融商品仲介業者が候補となるでしょう。税理士や会計士も候補となりますが、金融については専門外とする考えの方が多いのが実状です。
以上を踏まえた上で、どのような観点で保有金融資産を分析すればよいのか解説していきます。

金融商品は「収益性」「安全性」「流動性」の3つの要素から検討する

金融商品には、預金、債券、株式、投資信託と様々な種類のものがありますが、全ての金融商品は次の3つの側面から比較検討するのが原則です。

収益性

「いくら収益が上がるのか」という側面で、比較のために、過去3年間の年率、過去5年間の年率、などと年率で表します。例えば投資信託の収益性は、運用会社のホームページや、投信情報の提供会社モーニングスターのホームページなどで簡単に確認できます。
将来の収益性を予測する場合は、国内株式、外国債券など、各資産クラスが持つ歴史的な収益性をもとに、将来の期待収益率を合理的に推測する、というのが基本パターンです。個別の資産については、市場に対する個別価格の感応度を測定し、将来の収益性(リターン)を推測するというプロセスが一般的です。

安全性

安全性は大きく「価格変動リスク」と「信用リスク」に分類できます。
「価格変動リスク」は、「価格がどれだけ変動する可能性があるか」という側面で、通常「標準偏差」で表されます。標準偏差というと難しそうですが、「期待リターンからの価格の振れ具合」を数値で表したもの、と捉えておけば十分です。途中で換金しようと思った時に、最大いくらの損失を覚悟しなければならないかを示す指標ともいえます。
「信用リスク」は、債務を履行してもらえなくなるリスクのことで、通常AAA、BBBといった「格付け」で表されます。普通預金や国債などは元本保証とされていますが、元本保証をしているのは金融機関や国であって、それぞれの債務履行能力には違いがあることを認識しておかなければなりません。「格付け」は株式会社格付投資情報センターなどの格付け会社のホームページで確認できます。

流動性

簡単に言うと「換金性」のことであり、保有している金融商品を売却して現金にしたいと思った時に、すぐに売却できるのか1年待たなければならないのか、といった換金の自由度のことです。当分使わない、もしかすると必要になる、1年後には必要、といったお金の制約条件を考慮して商品を選ぶ必要があります。

3つの側面から見た評価

以上の3つの側面を考慮して、保有資産のリスクとリターン・保有コスト・換金性などについて確認しておきましょう。投資信託の場合は、「運用報告書」「投資家用交付目論見書」などに記載があります。株式や債券の場合は、ネット証券のウェブサイトなどから価格データをダウンロードして自分で計算を行う必要があります。取引のある金融機関の担当者に依頼しても、資料として出すのは認められていない会社がほとんどです。
商品選択にあたってもう1つ考慮すべきポイントは「複利効果」です。特に長期の資産運用においては、「複利効果」で収益性が大きく変わります。例えば、投信はファンドごとに配当金の分配方針があり、同じような投資対象の商品でも、分配金が少ない方が複利効果は大きくなります。株式の場合、毎年の税引き後利益のうち、配当として株主に分配する割合を配当性向といい、株主にとってはこの配当性向が複利効果を推し測る目安となります。例えばマイクロソフトは、1975年の創業以来2003年まで「配当しない会社」として有名でしたが、1986年の上場時に同社株式を購入した投資家は、約30年で300倍以上もの価値を得ています。一般にIT企業で多く見られるように、毎期の利益を配当として外部流出させるよりも、事業に再投資した方がより高いリターンが見込まれ、株主利益に資すると考える会社ほど、配当性向が低くなります。逆に重厚長大産業に多く見られるように、配当性向が高いほど、投資家にとっては複利効果が小さくなります。分配金が大きいから、あるいは配当利回りが高いからという理由で銘柄を選ぶ場合は、高配当の代償として生じる「マイナス複利効果」について留意する必要があります。

執筆者紹介

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氏名

森 秀光(もり ひでみつ)

生年月日

1966年9月20日

キャピタル・ソリューション株式会社 代表取締役

一橋大学経済学部卒。平成2年に野村證券株式会社入社。国内支店にて証券営業を担当後、米国及び欧州の運用会社にて、証券アナリスト及びファンドマネジメント業務に従事。平成9年より同社企画部門にて、国内支店のビジネス開発・営業支援業務に従事。同時に個人富裕層向けの資産運用アドバイス、上場法人向けのコンサルティング業務に携わる。平成26年より現職。有価証券だけでなく、不動産、自社株、相続・事業承継など、多様な側面から顧客資産の分析を行い、最適な解決策を提供することを目指している。資産運用のプロフェッショナルとして、幅広く講演、研修、セミナーを行っている。

≪主な著書≫

book-mori
『超低金利・大増税時代の資産防衛戦略』(幻冬舎)

≪連載コラム≫

『お金のセオリー』(朝日新聞デジタル ウェブマガジン「&M」、KDDI・テレビ朝日・朝日新聞社 au端末情報サービス「auニュースEX」)
『超低金利・大増税時代に資産を守り抜くための「税金対策」』(幻冬舎 GOLD ONLINE)