【資産運用の戦略】中核となるリスク性資産とは?

この連載では、現預金・国内債券を「安全資産」、株式・不動産・外国投資など安全資産以外の資産を「リスク性資産」と定義します。安全資産とリスク性資産の違いは、円ベースで発行体による元本保証があるかないかという点です。本稿では、リスク性資産のうち主に金融資産について解説します。リスク性資産を保有する目的は、あくまで資産価値の保全のために「長期的にインフレをヘッジすること」なので、個別銘柄の倒産リスクがないこと、そして運用コストが安いことを重視すべきと考えます。

ETF(Exchange Traded Funds, 上場投資信託) スマートベータ型ETF

銘柄選択によって市場を上回るリターンを追求することを「アクティブ運用」といい、市場に追随するリターンを目指すことを「インデックス(パッシブ)運用」といいます。日本の個人投資家に普及しているのは「アクティブ」の方ですが、実は株式投資信託のアクティブファンドで市場平均を上回っている割合は3~4割程度しかなく、運用コストや途中で消滅するファンドの数も考慮すると、成功しているファンドは非常に少ない割合となります。結論としては、株式投信のアクティブ運用ではコストに見合うリターンを獲得できる確率が低く、相対的にインデックス運用の方が成果を上げられる確率が高いということです。

インデックス運用のメリット

インデックス運用の投資手段となるのは、「ETF」や「インデックス投信」です。ETFは、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託です。米国や欧州では、ETFが資産運用の中心として位置づけられつつあり、世界のETF残高は350兆円を超える規模まで拡大しています。日本でも残高が16兆円規模まで拡大し、上場銘柄数も200銘柄に迫っています。
ETFが連動を目指す株価指数は、指数提供者(例えば東京証券取引所や日本経済新聞社)によって、市場を代表する指標となるように定期的に構成銘柄の入替が行われます。実はこのシステマティックな銘柄入替が、ETF投資家にとって、倒産リスクを気にする必要がなく、運用効率を高める最大のポイントになっています。例えば、構成銘柄の中で継続性に疑義のある銘柄が出てきた場合は、倒産リスクが生じる前に指数提供者によって入れ替えられます。また、万が一突然倒産する企業が出てきたとしても、全体に与える影響が極めて軽微であることから、個別銘柄の倒産リスクはほぼ無視できる水準になっています。東京電力やシャープが現在のような状況になるとは、20年前には誰にも想像できませんでした。大企業といえども長い間に何が起こるかわかりません。個別銘柄の固有リスクを抱えておっかなびっくり投資しているくらいなら、ETFで指数に投資している方がよほど安心です。特に個人投資家の場合、保有資産の価格が下がった時に回復する信念が持てないことがあるのですが、ETFであればいつかは期待リターン程度までは回復するという信念が持てます。

運用コストの重要性

長期投資を前提とすると、運用コストは収益性に大きな影響を与えます。ETFは売買手数料が株式と同じで、保有期間が長くなるほど1年当たりの売買手数料を小さくすることができます。また信託報酬は、海外のETFを含めて年率0.4%が平均的な水準ですが、日経平均連動型のようなシンプルなものであれば0.1%よりも低くなっており、株式の価格変動性からするとほぼ無視できる水準となっています。
価格の透明性や、流動性においても抜群です。TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価連動型のものであれば、新聞やテレビやネットでリアルタイムの株価を確認することができます。流動性は株式と同じく、市場の取引時間であればいつでも売買が可能で、最近では公的資金や機関投資家も頻繁に売買していることから、数億円単位の売買でも値段が大きくぶれる心配がありません。

「インデックス投信」は、毎日1つの基準価格で購入・換金される仕組みとなっているため、流動性という点ではETFよりやや劣ります。しかし最近では、ETF並みの低水準の信託報酬のものも出てきており、通常1万円から1円単位で購入できるため、ドルコスト平均法で等金額投資していくような長期積立スタイルに適しています。

スマートベータ型ETF

最近「スマートベータ型ETF」という新しい選択肢が存在感を増しています。スマートベータとは、企業の配当や売上高、ROE(自己資本利益率)、株価変動率などに着目して銘柄を組み入れた指数のことで、分かりやすく表現すると、インデックス運用とアクティブ運用の中間にある運用手法といったところです。2014年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、国内株式運用において初めてスマートベータ型アクティブ運用を採用したことをきっかけに、認知度が大きく上がりました。米国では、ETF資産残高の約2割をスマートベータ型ETFが占めており、欧州ではここ5年で市場規模が4倍に拡大しています。アクティブ運用で市場を上回るリターンを狙いたい人にとっては、低コストでアクティブ的なパフォーマンスが期待できるため、有力な選択肢になると考えます。

執筆者紹介

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氏名

森 秀光(もり ひでみつ)

生年月日

1966年9月20日

キャピタル・ソリューション株式会社 代表取締役

一橋大学経済学部卒。平成2年に野村證券株式会社入社。国内支店にて証券営業を担当後、米国及び欧州の運用会社にて、証券アナリスト及びファンドマネジメント業務に従事。平成9年より同社企画部門にて、国内支店のビジネス開発・営業支援業務に従事。同時に個人富裕層向けの資産運用アドバイス、上場法人向けのコンサルティング業務に携わる。平成26年より現職。有価証券だけでなく、不動産、自社株、相続・事業承継など、多様な側面から顧客資産の分析を行い、最適な解決策を提供することを目指している。資産運用のプロフェッショナルとして、幅広く講演、研修、セミナーを行っている。

≪主な著書≫

book-mori
『超低金利・大増税時代の資産防衛戦略』(幻冬舎)

≪連載コラム≫

『お金のセオリー』(朝日新聞デジタル ウェブマガジン「&M」、KDDI・テレビ朝日・朝日新聞社 au端末情報サービス「auニュースEX」)
『超低金利・大増税時代に資産を守り抜くための「税金対策」』(幻冬舎 GOLD ONLINE)