書籍紹介

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プライベートバンキングの基本技術富裕層マーケットで勝つための新たな営業手法

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出版社:清文社
発売日:2015/11/6

金融業界の変化とプライベートバンカー

これまで、金融機関のリテール営業担当者は、手数料率の高い金融商品を回転売買させることに注力してきました。為替手数料を期待できる外国債券、元本を取り崩して毎月高い分配金を支払っているかのように見せるREITなど、リテール営業担当者は、とにかくお客様に高い手数料を支払わせて、会社の利益を優先するような取引を行うことに邁進してきたはずです。
しかし、欧米のリテール金融マーケットを見ていますと、販売されている金融商品のほとんどが手数料率の低いものです。その代わり、運用助言に対する報酬や、預り資産に対する管理報酬によって稼いでいます。今後の日本もこのようなビジネスモデルに変質する可能性があるでしょう。
そこで、求められるのが、全く新しいスタイルのリテール営業のプロフェッショナルとしての「プライベートバンカー」です。
プライベートバンカーは、手数料率の高い金融商品を販売することを考えることはありません。お客様の最適な資産管理と運用の方法をアドバイスすることに加え、相続・資産承継に関わるお客様の問題点を探り出して、問題解決へと導くのです。このようなニーズは高齢者にとって非常に価値のあるのであり、このような役割を果たすプライベートバンカーは、高齢化が進む日本の資産家のお客様にとってたいへん重要な役割を果たすことになります。
資産家の資産運用、相続・事業承継をアドバイスできるプライベートバンカーは、現在、日本の金融業界においてその重要性がますます高まってきています。
ただし、手数料率の高い金融商品の販売だけに邁進してきた従来型のリテール営業担当者がプライベートバンカーとなることは容易ではありません。プライベートバンカーが提供するサービスの範囲は非常に広いものだからです。
日本証券アナリスト協会の定義によれば、「プライベートバンカーとは、富裕層(マス富裕層を含む。)のために、金融資産のみならず、事業再構築、事業承継を含めた生涯あるいは複数世代にわたる包括的・総合的な戦略をベースに投資政策書を立案し、その実行を助けるとともに長年にわたってモニタリングを続ける専門家のこと」とされています。この点、お客様から相談され、アドバイスする分野は、相続・贈与、事業承継、税務対策、内外不動産の取得・売却、金融・非金融資産の運用など多岐にわたるので、こうした分野については全て習得しておく必要があるのです。
お客様の資産管理を提案する際には、ご家族が達成したい目標、それを達成するにあたっての問題点、課題と解決策を明確化しなければなりません。その検討内容としては、例えば、家族構成、資金繰り、資産の分散、相続税など納税資金、資産運用・対策の提案ならびに期待される効果、最適資産配分の提案、ファミリー・ミッションの実現の可否などです。こうした価値あるサービスを提供するプライベートバンカーは、これまでのリテール営業以上にやりがいの大きな仕事であるはずです。

日本でのプライベートバンカー育成の課題

しかしながら、プライベートバンカーが活躍する欧米と比べ、日本には次のような特有の事情があることから、日本において本格的なプライベートバンカーが育成されているとは言えません。すなわち、相続税などの資産税制が欧米に比べて複雑なこと、土地制度が特殊であること、富裕層のみならずマス富裕層の存在が非常に重要で顧客戦略が欧米とは異ならざるを得ないこと、細分化されている金融業務と複雑に入り組む業法・規制の存在、金融機関における短期の人事ローテーシヨンです。
その一方で、日本の経済環境は大きく変化し、急速な高齢化の進展が大きな影を落としています。それゆえ、金融資産や不動産の保全、次世代以降にどう引き継いでいくかが、個人にとって資産運用以上に重要になってきているとも言えます。 この高齢化問題は、日本経済を支える中小企業や個人事業のオーナー、その家族にとっても大きな影響を与えています。つまり、プライベートバンカーに対する社会的な役割期待が高まってきていると言えるのです。
本書は、日本証券アナリスト協会が主催しているプライベートバンキング試験の受験生のために書かれた受験対策本です。プライベートバンキング試験は、富裕層に多様なサービスを提供するプライベートバンカーを本格育成するための、日本で初めての教育プログラムです。金融機関の窓口担当者や顧客担当渉外員、リテール金融業務に従事するスタッフ・管理職、さらにその上級幹部クラスを含む幅広い層を対象に、プライベートバンキングに関する知識や考え方を実務に即した視点から効率よく学ぶ機会を提供しています。

プライベートバンキング試験は、①リレーションシップ・マネジメント②ウェルス・マネジメント③不動産④税金⑤信託、エステート・プランニング⑥マス富裕層⑦職業倫理で構成されています。学習範囲が広汎にわたり、各章に出てくるテーマが相互に絡み合っている点が特長です。
本書によって基礎知識を整理し、プライベートバンキング試験の受験に臨んでください。難しく見える論点もフローチャートや図解を使って分かりやすく整理してあります。
本書では、プライベートバンキング試験を合格するに足る重要なテーマを習得するにとどめてあり、これだけで試験に合格することも可能だと思われますが、本格的な実力を身に付けたいのであれば、日本証券アナリスト協会の通信教育講座のテキストなどで補足するようにしてください。


金融機関・税理士・FP・PBのための事業承継・相続における生命保険活用ガイド―活用手法と税務

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出版社:清文社
発売日:2015/3/17

事業承継に影響深い生命保険

中小企業経営者にとって事業承継は重要な課題です。しかし、実務の現場で事業承継の現状を見ていますと、多くの中小企業では、遺産分割でトラブルが発生したり、相続税の納税資金が不足したりするケースが多くなっています。事業承継はオーナー経営者にとっての相続を意味しますから、企業経営という要素を承継しなければいけない分だけ、他のタイプの資産家よりも生前対策が難しくなります。
そこで、様々な対策手段の中から、今回は最適な手段として「生命保険の活用」を採り上げました。平成27年1月から相続税が増税となり、これまで以上に生命保険の有効性に注目が集まってきているからです。
従来、「生命保険」は死亡保障と貯蓄の手段として位置づけられてきました。また、法人契約の生命保険は、決算対策として利益の繰延べ手段という機能が強調されてきました。しかし、生命保険には、これらの基本的機能だけでなく、相続・事業承継を円滑に実現するための手段としても有効に機能するのです。
しかし、このような生命保険の多様な機能とその有効性が認識されながらも、中小オーナー経営者や、金融機関の営業担当者、相続実務の経験の乏しい税理士・会計士が最初に手にすべき入門書が少ないようです。生命保険のみを、それも相続生前対策を積極的な意味で正面から取り上げた書籍は見当たりません。「事業承継」をテーマとする書籍が巷で売れているように、その事業承継対策に活用すべき手段の一つとしての生命保険にも関心が大いに高まっているはずです。
そこで、数多くの相続・事業承継をアドバイスした豊富な経験をもつ税理士である編著者が、生命保険を活用した事例を集め、初心者にとってもわかりやすい平易な文章で、活用方法を解説することにしました。
また、ここに掲載する提案事例は、日本を代表する生命保険会社であるソニー生命で最高水準の実績を残したエグゼクティブ・ライフ・プランナーが実際に顧客に提案したものです。生命保険会社のセールスパーソンの実績と相続専門の税理士の知識を集約した本書は、他には例のない付加価値を持つものであると自負しております。一般の中小オーナー経営者が専門家に相談するキッカケ、また生命保険セールスパーソンとの会話を行うための基礎知識を身に着けるにも最適な内容です。


図解でなっとく! 信託&一般社団法人を活用した相続対策ガイド

978-4-502-14881-1_240

出版社:中央経済社
発売日:2015/6/24

相続対策に有効な信託&一般社団法人

資産家の相続対策において生前対策の重要性が高まってきています。生前対策には3つの側面、すなわち、遺産分割、納税資金、相続税から対策を講じなければなりません。
しかし、多くの資産承継の事例を見ていますと、生前贈与など従来から存在する伝統的な相続対策だけで十分に解決できない問題に突き当たっているケースが多く見られます。つまり、遺産分割がうまくいかずにトラブルが発生したり、多額の相続税の支払いを強いられて資金繰りに困ったりする問題に直面するケースです。
そこで、活用すべき相続対策の手法が信託(家族信託、民事信託)と一般社団法人なのです。
一般社団法人は、登記だけで誰でも簡単に設立することができます。持分のないこと、すなわち、オーナーが存在しないことが最大の特徴ですが、これが相続税対策に強烈な効果をもたらします。富裕層ファミリーの永続的な財産承継や、同族会社の株式承継のために有効に機能します。
一方、信託は2007年に信託法が改正されたことにより、個人間でも使いやすいものとなりました。特に、財産管理できない高齢者や年少者のためにご親族が財産を管理・承継する際に活用することができます。これにより、相続生前対策において従来ではできなかったことが多くできるようになりました。
これまで、「信託」は、信託銀行が提供する費用の高いサービスだと認識されてきました。しかし、家族信託や民事信託は親族内の契約でのみ効力を発することができる手軽な仕組みです。資産家の相続が増えてきている現在、「信託は難しい。」というマイナスイメージだけでなく、積極的に活用すべきものと感じてもらえる環境はできつつあると考えます。相続税の大増税時代において、急速に信託は普及していくものと予想します。
しかしながら、これらの手法の有効性が認識されながらも、その知識や経験のない資産家が最初に手にすべき入門書はあまり出版されていません。また、信託や一般社団法人のみを、それも相続対策に積極的に活用すべきと正面から取り上げた書籍はほとんど見当たりません。つまり、これらの手法は高度な資産税専門の税理士のノウハウとして止まってしまっています。
そこで、今回は、事業承継コンサルティングを専門とする著者が、実務を通じた経験に基づき、信託及び一般社団法人を相続対策に活用することを考えている読者に対して、わかりやすい平易な文章で解説することを試みました。他の専門書と違って、細かい説明を大胆に省略し、信託と一般社団法人をご自身の相続対策に活用できるかどうかを判断できる材料のみに限定して説明してあります。
また、オーナーと専門家(税理士など)との意思疎通を図るための共通言語として、信託と一般社団法人の基礎知識を身に着けるにも最適な内容です。


顧問税理士が教えてくれない資産タイプ別相続・生前対策完全ガイド

978-4-502-10671-2_240

出版社:中央経済社
発売日:2014/6/13

生前対策を行える税理士の不在の

わが国では、富裕層の資産承継を対象とするコンサルティング業務は、相続税申告という一局面において顧問税理士が対応しているものの、生前対策のアドバイスを提供できる税理士がまだまだ不足しており、残念ながらわが国において広く一般化しているとはいえません。
わが国は、個人の金融資産が1,500兆円まで膨れ上がる一方で、少子高齢化が急速に進んでいます。これまで蓄積してきた資産が取り崩される時代に入り、個人資産をどのように管理・運用するか、いかに円滑に次世代へ承継できるかは、資産家の方々にとって重要な課題です。しかし、こうした資産管理および承継に係るアドバイスは、金融機関など他の専門家にとっても未だ自社の利益優先で、試行錯誤の段階にとどまっているのが実情です。
これまでは、相続対策といえば、土地の有効活用や生命保険による代償分割など、各専門家の扱う商品・サービスを売り込むための手段としてアドバイスされてきました。銀行や不動産会社の営業マンは、融資によるアパート建設を売り込むために土地の有効活用を積極的に提案しています。また、生命保険会社のファイナンシャル・プランナーは、当然ながら法人向けの生命保険を売り込みます。しかし、これらのような偏った分野のアドバイスだけでは、富裕層の資産家の方々が抱える多様なニーズに応え、全体最適を実現するような戦略的な資産承継を進めることはできません。
そこで、全ての資産および負債(相続税)に係る包括的なアドバイスが提供されるような仕組みを作る必要があります。すなわち、不動産活用、企業経営、金融資産運用、生命保険のみならず、信託や海外資産を含め、全ての資産の承継方法に係るアドバイスと、将来発生する相続税額の計算を有機的に組み合わせた包括的なコンサルティング業務を確立する必要があります。
そのためには、税理士のみならず各分野の専門家が連携しなければなりません。すなわち、不動産の専門家である不動産会社、金融商品の営業担当者、相続税を計算できる税理士等が連携できる仕組み、そして、それを支えるプラットフォームが必要です。
この点、資産家のうち超富裕層に対するアドバイスは、外資系プライベートバンクを中心に、金融機関と税理士が緊密な連携を行っていました。これに対して、中小規模の富裕層に対するアドバイスは、ほとんど連携されていません。

問題となる一般層の相続対策

しかし、わが国の1,500兆円に上る巨額な個人金融資産の相当部分は、超富裕層ではなく一般の富裕層によって保有されているのが現状です。今後は、超富裕層以外の一般の方々に対する資産承継コンサルティング業務においても、金融機関と税理士が連携していく必要があるでしょう。
また、経済や金融はすでにボーダーレス化しているため、資産が海外に分散投資されているケースも多く、金融機関のサービスのグローバル化に伴って、国際的なアセット・アロケーションを行う資産家が増えてきています。したがって、節税対策を考えるならば、海外の税制を活用した手段も幅広く検討しなければなりません。しかし、国際税務をアドバイスできる税理士の数が不足しているのが現状といえます。
これまでの相続の書籍は、専門的な知識を学びたいと考える税理士向けの書籍がほとんどでした。しかし、税理士向けに書かれた書籍を一般の方々が読んでも、それを現場で活用することはできないと思われます。
そこで、資産承継対策の全体像を俯瞰できるガイドブックとして、私は本書を執筆しました。資産家が保有する主たる資産を、「不動産」、「企業経営(自社株式)」および「金融資産」の三つのタイプに切り分け、それぞれの特徴を踏まえて資産承継の方法を説明しました。これは、税理士が参考文献として使用するような専門書ではなく、一般の方々が、自ら買って読んでいたけるような、平易な入門書です。資産家の方々が本書を活用していただくことによって、多くの方々の資産承継対策の一助となれば幸いです。


M&A 中小企業のための会社売却(M&A)の手続・評価・税務と申告実務

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出版社:清文社
発売日:2014/5/20

中小企業の事業継続に重要なM&A

わが国の企業オーナーにとって、事業承継は重要な問題です。この点、子供が会社を継いでくれるならば問題ないでしょう。しかし、子供が後を継ごうとしないために、後継者不在という問題を抱えた会社が増えてきています。そのような場合、企業を清算するしかないと諦めてしまいがちですが、近年は、親族以外の第三者へ会社を売却することを事業承継の選択肢と考えるケースが多くなってきました。会社売却の対価を老後の生活資金をする、親族外の事業承継によって従業員の雇用を維持するためには、会社売却を成功させることが事業承継の有効な手段となるのです。
このような経営環境のなか、会社売却という選択肢の重要性が認識されながらも、それを積極的に推進する公的制度がありません。また、企業オーナーや、銀行担当者、税理士が最初に手にすべき会社売却の入門書がありません。これは、会社売却という手段が、金融機関や一部のM&A仲介業者のノウハウとなっているからなのです。
そこで、今回は、会社売却を考える後継者不在の企業オーナーを想定し、会社売却のプロセスをわかりやすく平易な文章で解説することを試みました。
企業オーナーが専門家に相談するキッカケ、また意思疎通を図るための共通言語としての基礎知識を修得するために最適な内容だと自負しています。もちろん、事業承継という視点だけではなく、業界再編など戦略的なM&Aという視点からも本書を活用していただくことができます。


税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド―顧問先にきかれたらこう答える!

978-4-502-68740-2_240

出版社:中央経済社
発売日:2011/07

オーナー企業における事業承継の課題

日本には、個人事業を合わせると400万を超える企業が存在していますが、その99%以上は、創業者一族だけで経営権を握るオーナー系の中小企業です。起業家として事業を興したオーナーは、ここまで厳しい経営環境を乗り越え、技術やノウハウを磨き、雇用を拡大し、日本経済の発展に大きく貢献してきました。
今日、こうした中小企業のオーナーの多くが、「事業承継」という難題に直面しています。もっとも、日本では親族内承継が一般的ですから、経営に意欲がある子息・子女がいるならば、相続さえクリアできれば問題ないでしょう。しかし、近年は相続できないケースが増えてきているのです。たとえば、子息・子女がいないケース、子息・子女がいるものの経営の意欲と能力を持たないため相続できないケースです。このため、事業承継を行うことができないオーナーは、廃業を選択することになります。事業承継を乗り切れなかったことが原因で企業が消滅してしまうこと、これは社会的にも大きな損失といえるでしょう。
団塊の世代の中小企業オーナーの大量引退を目前にして、事業承継のアドバイスを必要とする顧客が、今後はますます増えてくるだろうと予想されます。
平成23年度の税制改正において、相続税の基礎控除額の引下げなどが実施され、相続税申告の重要性については、その認識が高まってきました。今後は資産税を得意とする税理士・会計事務所の活躍する機会が増えていくことでしょう。
しかし、顧客が相続できない状況にある場合、税理士・会計事務所は、顧客に対してどのようなアドバイスができるのでしょうか。

選択肢としてのM&A

ここで筆者が提案したいことは、親族以外の第三者への事業承継すなわち「M&A」を顧客にアドバイスすることです。
M&Aによる事業承継は、これまで金融機関などによってアドバイスされてきました。近年、大手金融機関は、有力な手数料ビジネスとしてのM&Aアドバイザリー業務に積極的に取り組んでいます。しかし、本来、中小企業オーナーが最も頼りにしている存在は、金融機関ではなく、税理士・会計事務所であったはずです。税理士・会計事務所が、相続税申告など税務に関するアドバイスだけ行い、M&Aのアドバイスは他人任せにしておいて、それでいいのでしょうか。
もちろん、会計・税務の本業が忙しく、慣れない単発のM&Aまでは手に負えないという方もいるでしょう。しかし、M&Aアドバイザリー業務の一部を外注するならまだしも、その全部に外部に丸投げしている現状は、けっして好ましい状況とはいえません。筆者は、税理士の仕事は、相続税申告だけではなく、M&Aのアドバイスまで広げなければ、顧客の事業承継に対するサポートが不十分だと考えます。
そもそも事業承継の目的は、社会的な観点から、オーナーの手を離れた会社が永続的に成長すること、すなわち、会社の事業価値を生み出す「源泉」(特に人的資源)が維持されることです。とすれば、事業承継の手段となる、相続とM&Aは同等に取り扱われるべきものではないでしょうか。
大企業の本格的なM&Aは、主として投資銀行によってアドバイスされてきました。中小企業のM&Aは投資銀行によって扱われることがないため、主として商業銀行やリテール証券会社によって仲介という形でサポートされてきました。
しかし、中小企業のM&Aだからといって、相手方を見つける仲介だけ行われていればよいというものではありません。中小企業といえども、M&Aを通じて利益の最大化を図るためのアドバイスが提供されるべきです。
ここで、この役割を担える有力な存在が、中小企業に日常的に接している税理士だと考えられるのです。

税理士の方にとっての本書の位置付け

もちろん、M&Aを経験したことのない税理士の方々が、いきなりM&Aアドバイザリー業務をやれといわれても、実際に何をどうすればよいかわからないはずです。
そこで、本書は、M&Aを経験したことのない方々でも、実務の現場でガイドブック、マニュアル本として使用できることを目的としました。
確かに、M&Aには、経営戦略、コーポレート・ファイナンス、法務、会計、税務、経営組織論、コーポレート・ガバナンスなど多様な分野が関係しており、M&A取引の本質を理解することは容易ではありません。
しかし、会計と税務の分野において一定のレベルにある税理士の方々であれば、M&Aを一から学習する必要はありません。本書をガイドブックとして活用いただくことによって、M&Aを新しいビジネスとして提供することが可能となるはずです。
本書の特徴は、三つあります。
第一に、M&Aを実行する顧客の目線から説明するものではなく、顧客に対してどのようにアドバイスすればよいのか、M&Aアドバイザーの目線から説明していることです。このような企画はこれまで出版されることはありませんでした。M&Aアドバイザリー業務の知識とノウハウは、投資銀行の固有のものとして蓄積されており、それが対外的に公表されることがなかったからです。
第二に、M&Aの現場を投資銀行のフロントで経験した筆者が書いていることです。これまで多数のM&A関連書籍が出版されてきました。しかし、これらは、会計、税務、ファイナンスなど、特定の分野に絞って、専門的な解説が行われているものがほとんどです。つまり、一連のM&Aアドバイザリー業務のノウハウを包括的に解説した書籍は出ていません(ゴールドマン・サックス出身の服部暢達氏が本格的なM&A本を出版されていますが、これは大企業のM&Aを対象としたものです。)。本書は、筆者自身の投資銀行におけるM&Aアドバイザリー業務の経験に基づき、教科書的な形式論に陥ることなく、実務の現場ではどのように顧客にアドバイスするのか、実務家の視点から解説したものとなっています。
第三に、大企業の案件やクロスボーダー案件において用いられるM&Aアドバイザリー業務のノウハウを、中小企業の事業承継案件において活用することを目的としていることです。
中小企業と大企業では、M&Aのアドバイスの方法が大きく異なります。大企業の大型案件では、緻密な価値計算、厳格なプロセス管理、戦略的な条件交渉など、顧客利益の最大化を図るために、高度なアドバイスが求められます。
これに対して、ほとんどの中小企業の事業承継案件には、取引相手方を見つけるマッチング機能だけしか提供されていません。
しかし、中小企業だからといって、取引相手が見つかればそれで十分だというわけはなく、M&Aを通じた利益最大化を目的とするアドバイスが提供されるべきだと考えます。
そこで、本書は、顧客の利益最大化を目的とする投資銀行のM&Aアドバイザリー業務のノウハウを、中小企業のM&Aに活用していただくことを目的としています。

付加価値創造という税理士の本質的課題に向けて

さて、税理士・会計事務所の収益環境は、近年、ますます厳しくなり、従来の税務顧問だけでは、現状維持すら危うい状況となっています。このような状況を打破するためには、税理士として、新しい業務を開発し、業務の幅を広げていく必要があります。そこで、考えてられる業務が、本書で提案する「M&Aアドバイザリー業務」なのです。
税理士の方々であれば、、顧客からM&A案件の相談を受けた経験が、一度はあることでしょう。その際、せっかく知りえた顧客ニーズであるにもかかわらず、M&Aは自分の手に負えないと諦め、金融機関やM&A仲介会社へ丸投げされたのではないでしょうか。しかし、このような対応は、税理士のビジネス・チャンスを逃しているだけではなく、顧客の立場においても利益最大化の機会が失われているのです。
顧客の利益を考え、税理士の方々が、M&Aを自らアドバイスしてください。最初は難しいかもしれませんが、なガイドブックである本書を活用することによって、それが可能となるはずです。
なお、ご留意いただきたい点ですが、本書は、発行済み株式総数のほとんどを保有するオーナーが顧客となるようなM&A案件を想定しています。言い換えれば、上場企業の売却やMBOのように株主が不特定多数のM&A案件は対象としていません。これらの案件には、株式の公開買付け(TOB)が必要となるため、税理士所が容易にアドバイスできるものではなく、証券会社がアドバイスすべきものだからです。
ただし、上場企業がその子会社売却または事業部売却を行う場合(法人株主のM&A)、本書の内容で十分カバーできるようになっています。

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